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続 小児歯科医 こころの声

続 小児歯科医 こころの声

 

「涙」その3

 

子を想う母親の涙は、美しい。

子を想う母親の涙は、慈愛に満ちている。

母親の涙には、子を想う心がいっぱい詰まっている。

そんな嬉し涙を見せて頂いた僕は、幸せ者である。年甲斐も無くもらい涙を流した。自分を必要としてくれる人がいると思うと先生も嬉し涙。歯医者のお姉さんも目を潤ませている。泣いていないのは僕一人だけ‥‥‥。なんか変。

子どもの歯医者さんをやっていると、大人の歯医者さんで大変な思いをして受診される子どもが少なからずいる。

いつもと違って涙なしで初めて治療が上手に出来た時、お母さんの目から涙がこぼれた。涙なしで上手に出来た事がよほど嬉しかったのだろう。

先生は、ここ1~2か月の間に3人のお母さんを泣かせてしまった。

 

 

とんでもないとこへ来ちゃたよ。ママ。」

 

初めての人に大きなお口開けるの嫌だったけど、「かばさんのアーン」って言うから少しだけ開いてあげたよ。ママだったらもっと大きなお口してあげるけどね。初めての人だもん。

この先生「歯ブラシしょうね。ここから磨くよ。」と言いながらお鼻を磨き始めるんだよ。「あほちゃう。」先生いびきをかいて寝始めたよ。「グーグーフンーガー。」歯ブラシが止まっているよ。「やっぱこの先生 変!」「先生寝てしまいました。」だって、「本当にあほかも。」

歯を磨こうとして寝てしまう先生どこにいるねん。その上、間違えてお鼻を磨く先生やっぱり変だよ。

「とんでもない歯医者さんに来てしまったよ。ママ。」

目を覚ました歯医者の先生は「よく寝ちゃうから寝たらまた起こしてね。」だって。「ゴシゴシゴシグーグーグー。」あっ、またこの先生まぶたが下がってきたよ。ほらまた寝てしまったよ。ママ。「寝ちゃダメだぞー。」って大きな声で言って

やったら「わおー。」ってびっくりして目を覚ましたよ。

「とんでもないとこへ、来ちゃったよ。ママどうしよう。」

今度は、小さな鏡を手に「お口の中をもしもしするよー。」だって。「ちゃんと診てね。」この先生僕のお鼻の穴を鏡で診ながら、「歯1本もあらへん。御爺さんみたいや。」って言うんだよ。「失礼な!そこはお鼻だよ。」って言ってやったら、

「先生お口と間違えてしまいました。」だって、「失礼な!僕は、北島三郎じゃないよ。本当にとんでもないとこへ来ちゃたね。ママ。」

でもね。目を覚ました先生それからは間違えずに僕のお口の中を「もしもし。」って言いながら探検してくれたよ。

最後に先生は、ママとお話しをしていたよ。「おうちでも先生がやった様に、お鼻磨いたり、わざとお鼻の穴を覗いたりして下さいね。」って。「おうちでは寝ないでね。ママ。」

「歯磨きの時、先生と同じ事をして頂くと、子どもに歯医者さんの記憶が蘇ります。おうちでも楽しい歯磨きをして下さい。おうちに持って帰って下さいね。」って、「エアーギター」じゃなくて「エアー歯磨き」のお土産なんだって。

 

 

「いつも僕ばっかり」

 

「ママは、虫さんが出来ない様に毎日仕上げ磨きをしてくれるよ。いつもママのお膝の間にゴロンと寝て磨いてもらうよ。でもね。僕、ママの仕上げ磨き一度もした事ないんだよ。」

先生がママにこんな質問していたよ。「ママは子どもさんに磨いてもらった事ありますか?」って。ほとんどのママが、「磨いてもらった事なんて一度もないです。」「そう言えば、僕ばっかりで、僕、ママの仕上げ磨きした事一度もないよ。僕はいつも仕上げ磨きされるけど、ママは磨かせてくれないもん。いつも僕ばっかり。」

「今日はママ磨いてくれる?」と子どもさんにお願いしてみて下さい。「えっ。ママのお口磨かせてくれるの?」と、いつも磨かれてばかりの気持ちを歯ブラシに込めて磨いてくれます。いつも磨かれてばかりいる子どもの気持ちがちょっぴり分かるかも。パパの参加も大歓迎です。「明日はパパ磨いてあげてね。」とママからお願いして下さい。

歯磨きの立ち位置も子どもと対等にする。子どもはいつも僕ばっかりゴシゴシされると思っているに違いない。先生は子どもの耳元で「ママ泣くかもしれないよ。ママが泣いたら今度来た時先生に教えてね。」「歯ブラシで泣いちゃダメでしょ。と言ってあげてね。」と子どもに知恵を授けます。ニコッと嬉しそうな子どもの顔。

ママにはこうお願いします。「いつも子どもさんを磨く時と同じ姿勢、同じやり方でお願いします。」と注文します。子どもの膝の間にゴロンとママも同じ様に寝転がって、「ホイ」っと歯ブラシを子どもに渡します。いつも磨かれてばかりの僕。

ママのお口をゴシゴシシャカシャカ。でもすぐ飽きちゃう。3秒で終わってしまうかも。

でもここからママの指導が入ります。「こっちも磨いてね。上の奥歯も磨いてね。下の前歯もお願いね。」と指でナビゲーションします。一通り磨いてもらったら、むくっと起き上がり、「ありがとう。きれいになったよ。ママ嬉しかったよ。」と

感謝の気持ちをちゃんと子どもに伝えます。間をおかず、「今日はいっぱい磨いてもらったから、今度はママが磨いてあげるね。ママと交替。」

子どもの心の中では、いつもの受動的な「磨いてもらう。」から主体的な「しょうがないなあ。今日は磨かせてあげる。」に変わる。「仕上げ磨きをする」ではなく「仕上げ磨きをしてもらう」をママ自ら子どもに示す事で子どもの心が変わる。

いつも一方的に磨かれている子どもの気持ちも理解出来る。「これを難しい言葉で言うと行動変容って言います。」何かにつけて生意気な先生だ。

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